再生支援協議会を活用した事業再生とは

中小企業の事業再生で大きな役割を果たしているのは、中小企業再生支援協議会になります。再生支援協議会による事業再生の概要は以下のとおりです。

1 再生支援協議会による事業再生のメリットとは

再生支援協議会には、以下に述べるとおりのメリットがあることから、中小企業の事業再生手続において最も利用されている手続と言えます。金融機関出身者が関与しているケースが多く、金融機関からも信頼を受けております。

  1. 事業価値の毀損が生じにくい私的整理であること
    法的整理(民事再生)を申し立ててしまうと、一般取引業者を巻き込みますので、今後の仕入が困難になったり、得意先が離れるなど、事業価値が大きく低下することがあります。そうなってしまうと、事業再生を進めるどころか、事業継続すら困難になってしまいます。金融機関のみを対象とし、事業価値の毀損が生じにくい私的整理が望ましいと言えます。
    再生支援協議会による事業再生は、金融機関のみを対象とする準則型私的整理(事業再生税制で言うところの準則型私的整理とは違った意味になります。)の1つと言えますので、通常、事業価値の毀損が生じることはありません。
  2. 事業改善を念頭に置いていること
    債権放棄などの抜本処理を計画する案件については、財務DDのみならず事業DDを実施して、事業上の問題点(外部環境・内部環境分析)をあぶり出し、事業改善に努めることが多いです。事業改善を行うことから、二次破たんが少ないと言えます。
  3. 金融取引の正常化を目指していること
    私的整理のメリットの一つとして、将来の金融取引の正常化を目指すことが出来る点が挙げられます。中小企業は資金に乏しいことから、将来の設備投資や運転資金などの融資を受けられることは、会社の成長はもとより事業継続のためにも合理的なことです。
    そのため、再生支援協議会では再生計画の数値基準が次のとおり準則化されております(再生支援協議会事業実施基本要領6項(5)②以下)。
    • 実質的に債務超過である場合は、再生計画成立後最初に到来する事業年度開始の日から5年以内を目途に実質的な債務超過を解消する内容とする。
    • 経常利益が赤字である場合、再生計画成立後最初に到来する事業年度開始の日から概ね3年以内を目途に黒字化する内容とする。
    • 再生計画の終了年度(原則として実質的債務超過を解消する年度)における有利子負債の対キャッシュ・フロー比率がおおむね10倍以下となる内容とする。
  4. 債権放棄案件や経営者保証ガイドライン案件も多数扱っていること
    実務上、過剰債務の処理も多数扱っております。平成29年第一四半期の情報によりますと、累計で977件の債権放棄案件を扱ったとされています。中小企業の私的整理において、最も活用されていると言えるでしょう。保証人については、経営者保証ガイドラインを一体的に活用することとなり(平成26年2月以降の運用と思われますが)、上記情報によりますと、累計で374件の実績(大部分が一体型の案件と聞いていますが、単独型の案件もそれなりに扱っておられるようです。)があります。
  5. 財務・事業DD費用の補助がされることもあること
    案件にもよりますが、各種DD費用の一部が補助されることもあります。

2 再生支援協議会事業実施基本要領とQA

中小企業再生支援業務を行う者として認定を受けた者(各地の再生支援協議会)が実施する中小企業再生支援協議会事業について、その内容、手続、基準等を定めるものとして、中小企業再生支援協議会事業実施基本要領QAが公表されています。