経営者保証に関するガイドライン単独型における特定調停利用の留意点

経営者保証に関するガイドラインの単独型で特定調停スキームを活用する場合の留意点について説明します。

1 単独型の特定調停の手引きとは

経営者保証に関するガイドラインでは、主たる債務と保証債務について一体整理を図る場合(一体型)と一体整理が困難な場合に保証債務のみを整理する場合(単独型)の2つの類型がありますが、単独型を利用するマニュアル(手引き)として、「経営者保証ガイドラインに基づく保証債務整理の手法としての特定調停スキーム利用の手引き」が制定されています。単独型で特定調停手続を利用する場合はこの手引きを参照して進めることになります。

2 手続の留意点

(1)一時停止等の要請

経営者保証に関するガイドラインを活用する場合には、保証人が保証債務の整理を申し出る必要があります。具体的には、主たる債務者、保証人と支援専門家(代理人弁護士)が連名した書面で一時停止の要請を行うことになります(手引きの書式8参照)

(2)事前調整の重要性

特定調停を円滑に行うためには調停の申立前に対象債権者と十分な事前調整を行うことが極めて重要です。特定調停を申し立てる前提として、全ての債権者から同意が得られる見込みが必要です。事前同意まで必要とはされていないので、一定程度、調停手続で交渉を図ることも可能な点が特徴です。

(3)特定調停の申立て

保証人(債務者)を申立人、対象債権者(金融機関等)を相手方として簡易裁判所に申し立てます。対象債権者が複数名いても通常は1件で申し立てます。 信用保証協会の保証付きである場合、代位弁済前であっても信用保証協会を利害関係人として参加してもらうことができます。 地方裁判所本庁に併置された簡易裁判所に申立をすることが望ましいとされています。

(4)経営者保証に関するガイドラインの要件を充足した申立書や調停条項の作成

単独型においては、一体整理が困難な理由、法的整理手続ではなく経営者保証に関するガイドラインで整理する理由を記載します。経営者保証に関するガイドラインの要件はいくつかありますが、手引きの参考書式を活用すれば、要件を満たした申立書や調停条項が作成できることになります。

(5)調停期日

第1回目の期日では申立人からの確認や対象債権者への意向確認が行われる場合のほか、調停が成立する場合もあります。第1回期日で調停成立なのか意向確認だけなのかは事前に確認しておくことが望ましいと言えます。また、対象債権者は、代表者(頭取)が参加することは考えられないので、委任状を用意してもらうよう、事前に対象債権者と調整しておくことが必要です。

(6)印紙代の説明

多くの事例では、経済的利益は算定不能とされ、印紙代は6500円とされておりますが、債務免除額で計算されてしまうと、弁済計画の内容に影響が生じますので、この点のリスクについては、支援専門家である弁護士は、保証人と対象債権者にそれぞれ説明することが求められます。