民事再生と賃貸借契約(賃借人側の検討)

民事再生する会社が賃借人になっているケースも少なくありません。私的整理か民事再生かの検討をする場合においても、民事再生においては不利益となっている賃貸借契約を解除することが出来ますので、賃借人の法律関係についてチェックしておくことが必要です。

1 民事再生法49条1項の適用

賃借人につき民再再生手続が開始された場合、賃借人は賃貸借契約を双方未履行の双務契約として、契約の解除又は履行継続のいずれも選択的に請求できます(民事再生法49条1項)。例えば、賃借している事業所がいくつかある場合には事業継続に必要な事業所の賃貸借契約のみを存続させ、他の不要な物件は経費削減のために解除することができます。

2 契約解除をするとどうなるのか

賃借人が賃貸借契約を解除した場合、再生手続開始後解除までの賃料債権は民事再生法119条2号により、解除後明渡完了までの賃料債権は同条6号により、いずれも共益債権とされます。賃借人としては不要な賃料の発生を防ぐために不必要な物件は速やかに明け渡すことが求められます。

実務上、賃借人が契約を解除するには一定期間を必要とし、その期間前の解除は、違約金を没収したり、損害金等を支払う特約がなされていることがあります。このような特約は、民事再生法49条1項所定の法定解除の場合にはその効果は及ばないとする見解が有力となっています。

3 履行を選択するとどうなるのか

賃借人が履行を選択した場合、再生手続開始後の賃料債権は共益債権とされます(民事再生法49条4項)。賃借人としては賃借している物件の賃料をしっかりと資金繰りに反映させ、賃料を滞納することがないように注意することを忘れてはなりません。 なお、再生手続開始前の賃料債権については再生債権となります。

4 倒産解除特約の有効性

賃貸借契約書上、賃借人が民事再生手続を申立てた場合、賃貸人から賃貸借契約を無催告で解除できるという特約が設けられていることがあります。このような特約につきましては、法が再生債務者(賃借人)に契約の解除又は履行継続のいずれも選択的に請求できるとした趣旨を没却させることになるため、効力を否定すべきです。