資金繰り表の作成手順

拙著「私的再建の手引き」で詳しく書いていますが、本Webサイトでも要約版を公開いたします。民事再生のみならず私的整理(私的再建)でも資金繰り表を作成することは大事ですので、以下、資金繰り表の作成手順についてご説明いたします。
資金繰り表は、「日本公認会計士協会近畿会」のwebサイトからダウンロードすることができます。

1 約定資金繰り表の策定手順

<目的>

このまま約定に従って誠実に支払いを続けたら、いつの時点で資金ショートするか(若しくは、手形不渡り事故となるか)を知るために策定します。逆に言えば、このまま支払いを続けても資金があれば、後述の改訂資金繰り表を策定する必要はないでしょう。[月次資金繰り表]だけでは期中の資金ショートが分からないので、日繰り表も策定しましょう(ex.月次資金繰り表上では、期首100万円、期末300万円とあることから安心していたところ、大口入金のある31日の前の25日に大口の支払いがあり、それを支払うと一時的に資金ショートしてしまうような場合、当該事象は月次資金繰り表では分からないからです。)。

<収入>

収入は判明している限り、現実に入ってくる日の金額を書いて下さい。原則として、売掛金回収リストなどを活用して、現実に入金される見込みの金額を入れるようにしてください。将来分で売掛金が確定していないものや現金主義の会社の場合には、昨年の同時期を基準に今期の売上予測(プラスマイナス)に従って、記入してください。
※単位は千円単位にして下さい。
※毎日の売上収入が分からない場合は一応5日分毎(1ヶ月を6回分割)に記入しても構いません。
※スタートの手持現金については、判明している日現在のものを正確に記入して下さい。
※遊休資産がある場合には、これらを換価し、資金繰り表に入れるようにしてください。経常収支と区別するため、投資収支等別の項目を準備してください。

<支出>

支出については、既に請求書が届いているもの、取引先により支払日が決められているもの、電気・ガス・水道等の公共料金(家賃やリース料等の事務所経費)の自動引落、従業員の給料、銀行等の返済等支払日が決まっているものですから、できる限り正確に記入して下さい。

2 改訂資金繰り表の策定手順

<目的>

約定資金繰り表で近い将来(ex.3ヶ月後)資金ショート(ex.手形不渡り)する事が判明したので、次に資金繰りの操作だけでとりあえず、資金ショートを回避するあくまで一時的な応急措置。(注意 抜本的解決ではない。)

<収入>

約定通り分と同じ

<支出>

できる限り、信用不安を惹起させない支払先から順次弁済を停止(0)して下さい。
停止しても事業価値が低下しないところから停止をお願いするしかありません。
第1次 金融機関元本支払いを停止します。
これでも資金ショートが生じてしまう場合には、利息支払停止の検討まで行うことになります。
第2次 金融機関利息支払い停止
第3次 税金の一部
それでもまだ収支がマイナスの場合はやむを得ず、取引先のうちの大口分の順で支払繰延をして下さい。
(注意) 手形決済日前に商取引先手形の決済金が上記方法によっても不足する場合(結果として、次期以降の手形決済資金が不足する場合を含む。)は民事再生手続の申立を検討することになります。
第1次の元本停止だけで事業継続ができる会社の場合には、いわゆる「リ・スケジュール」ができることもあります。「リ・スケジュール」の間に事業の再構築(経営合理化)により、収支がプラスになる絵を描けるようにすることが必要です。

なお、利息すら支払えない事態というのは、異常事態ですので、経営合理化(人件費カット、本社移転等)を早急に実施しなければなりません。