個人の自己破産Q&A

個人の自己破産について相談者の方からよく出る質問を取り上げてみました。破産処理の運用は時代によって、また、地域によっても多少異なっています。詳しくは弁護士までお尋ねください。

Q1:支払をしなければ、債務がサービサーに移り、少額で和解できると聞きましたが、それでは駄目でしょうか?
答え:確かにサービサーに債権が売られて、債権額の数%で和解できるケースもあります。
しかし、それは何年後になるかわかりません。ちなみに、信用保証協会は、原則として、債務免除に応じることはありません。そこで、(連帯保証債務の場合ですが、)会社の債務整理の話し合いが債権者とほぼまとまり、きちんと資産状況を開示すれば、債務免除をしてくれることが可能性が高いケースでなければ、破産をなさった方がよいでしょう。
ただし、相談者様が経営者で債務の大部分が金融機関の保証債務であれば話は別です。経営者保証に関するガイドラインの検討をすることができるからです。経営者保証に関するガイドラインは金融機関も真摯に検討してくれるので、破産せずとも保証債務の整理ができる場合も少なくありません。
Q2:自己破産すると一生クレジットやローンの利用はできなくなりますか?
答え:破産手続が開始されると官報に公告され債権者にもその旨が通知されます。また、信用情報機関にも、そのことが事故情報として登録されますので、破産宣告後は銀行などの金融機関からの借り入れやクレジット会社のカードを作り利用することはできなくなります。この期間は、だいたい7年ぐらいと言われています(信用情報機関によって、期間は異なるようです。)。この期間を過ぎて、経済状態が回復していれば、再び、クレジットやローンを利用することができるようになります。ただし、この期間は法律的なものではなく、それぞれの金融機関の会社内部の規定に基づくものなので、いつから利用できるかは実際に申し込んでみないとわからないことになります。
他方で、経営者保証に関するガイドラインの場合には、信用情報機関に掲載されません。

※ブラックリストについて

ブラックリストとは、各信用情報機関に登録されている事故情報をいいます。
信用情報機関とは、消費者金融などの円滑化を図るために銀行協会、消費者金融専業者等が運営している情報機関です。
代表的なものとして、銀行、信用金庫、信用組合などが会員となっている全国銀行個人信用情報センター、消費者金融専業者が会員となっている日本情報センター、信販会社、家電・自動車メーカー系クレジット会社などが会員のシー・アイ・シーなどがあります。 また、各信用情報機関は、CRIN(クリン)システムにより現在、事故情報について相互利用を実施しています。なお、情報の登録期間は各機関によって多少異なりますが、延滞などの事故情報については、事実発生後5年間、自己破産に関する情報については、10年を超えない期間になります。

Q3:自己破産すると家族や子供に影響はあるのですか?
答え:法律的な影響はまったくありません。親の自己破産が子供の進学、就職、結婚などに影響することはありませんし、家族への影響もまったくありません。
Q4:夫が自己破産した場合に、家族に借金の返済義務はありますか?
答え:家族が申立人の「保証人」になっていなければ、家族に支払い義務は一切ありません。
たとえ債権者から家族あてに請求があったとしても、それに応じる必要はまったくありません。また、そういった取り立ては貸金業法規制法に違反しています。万一、そのようなことがあれば、直ちに、当職までご連絡下さい。
Q5:自己破産をすると海外旅行に行かれなくなるとか、引越できないって本当ですか?
答え:管財人がつかないケース(同時廃止事件)では、いつでも海外旅行に行くことができます。ただし、破産管財人事件の場合は、破産の手続きが終わるまでは裁判所の許可なしで引越しや長期の旅行に行くことはできませんが、破産手続きの後は、いつでも海外旅行に行くことができます。実務上は、不許可になることはほぼありません。
Q6:私は中小企業の経営者ですが、経営者保証に関するガイドラインではなく、弁護士からは自己破産を勧められました。どうしてですか。
答え:経営者保証ガイドラインでは、債務整理が出来ないケースの場合には、自己破産を進めることが出来ます。例えば、経営者保証ガイドラインの場合には、対象にできるのは原則として、金融機関の保証債務だけです。個人的な住宅ローン、カードローン、リース債務等が多額にあり、これらの整理も必要な場合には、全債権者を取り込むことが出来る破産手続の方が合理的ともいえます。また、経営者保証ガイドラインの場合、主債務者が多額の粉飾をしている場合などどうしても利用しにくい場合もあります。
もっとも、上記事情ではなく、自己破産を勧められたのであれば、一度当事務所に具体的な事情を確認させてください。場合によっては、経営者保証ガイドラインの活用が検討できるかもしれません。
Q7:家族に内緒で自己破産をすることはできますか?
答え:自己破産の申し立て時に同居人の収入を証する書面を提出する関係上、ご家族に内緒で自己破産をすることは一般的には難しいと思います(同居のご家族が無職である場合など、内緒で出来るケースもあります。)。そこで、ご家族に事情を打ち明けて家族が協力し合って借金の整理をしていくことをお勧めいたします。同居していないご家族には、通常は知られることはないでしょう。
Q8:自己破産したことは会社に知られてしまいますか?
答え:原則として、債権者の方から会社宛てに申立人が自己破産することを通知することはありませんので、ご自分で言わないかぎり会社に知られる可能性は少ないと思われます。弁護士に依頼した場合には、各債権者は依頼人に対して直接取り立てをすることができなくなります。依頼を受けた弁護士は事件を受任した旨の通知を各債権者に送ることになり、各債権者がその通知を受け取った時点から勤務先への取り立ての電話はなくなることになります。
Q9:会社は社員が破産手続を申立てことを知った場合に解雇できますか?
答え:自己破産は懲戒解雇事由に当たりませんので、一般のサラリーマンは自己破産をしても会社から解雇されることは法律的にはありません。しかし、自己破産をしたことが会社に知られてしまうと、会社に居づらくなってしまうのではないかという不安もあると思います。原則として債権者の方から会社宛てに申立人が自己破産することを通知することはありませんので、ご自分で言わないかぎり会社に知られる可能性は少ないと思われます。弁護士に依頼した場合には、各債権者は依頼人に対して直接取り立てをすることができなくなります。依頼を受けた弁護士は事件を受任した旨の通知を各債権者に送ることになり、各債権者がその通知を受け取った時点から会社あての取り立ての電話はなくなることになります。
Q10:自己破産したことは身内(親族)に知られてしまいますか?
答え:必ず知られるわけではありません。家計状況の報告はしなければならないので、その限度で配偶者の収入状況等を確認させてもらうことはあります。
Q11:破産したことが新聞に載るって本当ですか?
答え:破産の事実が載るのは通常の新聞ではなく、「官報」という国で発行される特殊な新聞に載ることになります。しかし、普通の書店では購入することはできませんし、一般の人には縁がないものなので、通常は、官報から自己破産をしたことを知られることはないと思われます。
Q12:自己破産すると選挙権がなくなるって本当ですか?
答え:選挙権、被選挙権などの公民権はなくなりませんので、投票することもできますし、立候補することもできます。
Q13:自己破産すると戸籍・住民票に記載されるのですか?
答え:自己破産は戸籍および住民票には記載されません。ただし、本籍地の市町村役場の破産者名簿に記載されます。破産者名簿は破産者でないことの身分証明書を国が発行する際にチェックするための名簿であり、一般の人が見ることができるものではありません。なお、破産手続が終了した場合≪免責許可の決定(復権)≫により抹消されることになり、抹消後は「破産者でないことの身分証明書」を請求することができるようになります。
Q14:自己破産した場合に債権者が会社や実家に取り立てに来るのですか?
答え:銀行は当然そのようなことはしません。また、貸金業の登録している業者であれば、会社や実家への取り立てが貸金業法規制法のガイドラインに違反しているのを知っているので、その旨を伝えれば、そういった取り立てを続けることはないでしょう。しかし、本人に対する取り立てはこの限りではありませんので、自己破産の申し立てまでは電話などでの取り立ては続くことになります。弁護士に依頼した場合には、銀行や貸金業者は依頼人に対して直接取り立てをすることができなくなります。依頼を受けた弁護士は事件を受任した旨の通知を各債権者に送ることになり、各債権者がその通知を受け取った時点から依頼人は債権者からの厳しい取り立てから解放されることになります。ただ、闇金融と呼ばれる未登録の業者に関してはこの限りではなく、違法な取り立てなどによる被害があとを絶たないのが現状です。その際は、直ちに当事務所にご相談下さい。
Q15:自己破産をすると年金の受給はされなくなるのですか?
答え:自己破産をしても年金の受給権に影響はありません。自己破産後も同じように年金の受給がされることになります。
Q16:自己破産をするとアパートから出て行かなければならないのですか?
答え:家賃を滞納している場合には賃貸借契約の解除原因に当たりますのでアパートを出ていかなくてはなりませんが、家賃の滞納がない場合には出ていく必要はまったくありません。
Q17:自己破産をしてしまうと国家資格を受験することはできなくなりますか?
答え:自己破産をしても、それが国家資格を受験する上での障害にはなりません。ただ、資格の中には、免責を受けた後でなければ登録できない資格(弁護士資格など)もあります。(逆に免責を受けた場合は、そのような制限はなくなります。)
Q18:自己破産を申し立てると生活に必要な家財道具も差し押さえられるの?
答え:生活に必要なものは差押禁止財産といい、破産者の家族の生活に必要な衣服や家具などは差押えることはできません。なお、パソコン、高価なテレビなどでも所有権が債権者のものでなければ、ほとんどの場合、処分換金されることはありません。実際に自己破産の手続きにおいて処分、換金されるのは、自動車、株券などの有価証券、生命保険の解約返戻金(以上は裁判所にもよりますが価値が20万円以上の場合)、不動産(担保のついていない不動産を所有していれば、ほぼ間違いなく破産管財人事件になると思っていていいでしょう。)などの一定の価値のあるものです。
Q19:不動産を持っているのですが自己破産すると処分されてしまいますか?守ることはできませんか?
答え:自己破産を申し立てる時点で不動産を所有している場合は、原則として破産管財人事件になり、裁判所から選ばれた管財人により処分換金され各債権者に分配されることになります。なお、破産管財人事件の場合になると、裁判所に納付する予納金が相当額かかり、手続き費用が高額になります。(但し、不動産がいわゆるオーバーローン物件であり、その他の資産も乏しい場合には、破産管財事件にならないケースもあります。)他方で、自己破産前に担保権者と交渉して、不動産を親族等に買い取ってもらうことは出来ます。破産申し立て後であっても、破産管財人と交渉して、不動産を親族等に買い取ってもらうことが出来ます。このようにご自身の名義ではなくなりますが、事実上、ご自宅を守ることは可能です。
以上のほか、中小企業の経営者の方の場合、経営者保証ガイドラインの活用により、自宅を残すことも可能です。経営者保証ガイドラインの場合、住宅ローンなどの個人的借入金は、対象債権にならないため、原則として、住宅ローンの支払の継続ができるからです。この点は、当事務所弁護士にご相談ください。
Q20:自動車を持っているのですが自己破産すると処分されてしまいますか?
答え:自己破産を申し立てる時点で所有している自動車の価値が20万円以上ある場合には自動車を処分して債権者に分配するように判断される場合があります。この判断には通勤で使用しているので、処分されると困るといった理由は原則として考慮されません。なお、ローンで購入した自動車はローン会社が所有権を留保している場合があり、その場合はその自動車の価値にかかわらずローン会社に引き渡すことになります。ローンが残っていて、どうしても自動車を手放したくない場合で借金を整理したい場合は、親族にローンを引き継いでもらうか、買い取ってもらうことになります。(但し、ローンの残債務の方が自動車の価値を大きく上回っている場合には、新しく自動車を購入されることをお勧めします。)
以上のほか、経営者保証ガイドラインの活用も考えられます。
Q21:株式を持っているのですが自己破産すると処分されてしまいますか?
答え:自己破産を申し立てる時点で株式があれば、処分して債権者に分配するように求められる場合があります。価値が乏しい場合には、事前に合理的な金額で第三者に譲渡することもあります。
Q22:生命保険に入っているのですが自己破産すると処分されてしまいますか?
答え:自己破産を申し立てる時点で生命保険の解約返戻金が20万円以上ある場合には保険を解約して債権者に分配するように指示される場合があります。解約返戻金が20万円以下の場合には、自由財産の拡張が認められていますので、保険を解約する必要はありません。そのため、解約返戻金が20万円未満になるように、保険会社から借り入れを行い、借り入れた現金を破産予納金や代理人弁護士費用に充てて、保険契約を継続することは一般によくなされています。
Q23:退職金があるのですが、自己破産するとどうなるのですか?
答え:自己破産を申し立てる時点で退職金の支給額(支給予定額)が160万円以上ある場合には、裁判所からある程度の額を債権者に分配するように指示される場合があります。160万円未満の場合には、原則として、配当の対象になりません。
Q24:現在、会社の代表者をしていますが、自己破産、免責後は会社を設立することはできますか?
答え:自己破産、免責後であれば、自由に会社を設立することができます。役員在任中に破産申し立てをしても、辞任しない旨の特約を付せば、役員を継続することが出来ます。また、取締役にもなることができますので、会社の運営にも積極的に参加することができます。現在の会社(ないしはそれを承継した)会社の代表者にもなることが出来ます。法律上は、退任する必要はありません。
なお、中小企業の経営者の方の場合には、まずは経営者保証ガイドラインの活用を検討すべきです。
Q25:自己破産、免責を受けた後で、再び破産申し立てができるのでしょうか。
答え:破産自体は出来ますが、免責決定確定の日から7年以内に再び免責の申立をしても、原則として、免責は認められません。
Q26:自己破産で免責を受けられない事情、注意すべき事情はありますか。
答え:債権者を害する目的で財産の隠匿等をしたり、廉価で試算を処分したり、特定の債権者だけに支払を続けるような行為、虚偽の債権者名簿を裁判所に提出したり、裁判所の調査に対し、虚偽の説明をするような行為は、免責不許可事由となります。前述のように、7年以内の再度の免責申し立ても免責不許可事由になります。以上の次第ですので、財産隠匿、資産の無駄遣い等はお控えされるようお願い致します。
なお、悪質性の程度が高くない場合には、裁判所の選任した破産管財人の意見を踏まえ、裁判所の裁量により免責を受けられる場合もあります。

まとめ

ここまでご説明してきて、自己破産しても意外と不利益がないと感じられるのではないでしょうか。自分から言わなければ原則として会社や身内に知られることもありません。自己破産をして免責を受けてしまえば、復権しますので(破産者でなくなりますので)、生きていく上での不利益はしばらくローンやクレジットの利用ができなくなることぐらいです(むしろ、多額の債務がなくなることは生活を立て直すチャンスになるのです)。また、中小企業の経営者の方の場合、経営者保証ガイドラインの活用も検討できます。まずはお気軽にご相談ください。