民事再生と運送業者対応

民事再生を申し立てた結果、会社の商品の運送をしてもらえなくなってしまうと、事業継続が困難になります。本稿では運送業者対応を説明します。

民事再生の申立てをしますと、弁済禁止の保全処分(民事再生法30条1項)により、再生債権の支払が禁止されます。10万円以下など少額債権については弁済禁止の保全処分の例外として支払いをすることが認められますが、再生手続開始後においては、あくまでも再生計画による弁済しか行えません。
特に再生債権者に運送業者がいる場合には要注意です。なぜなら運送取扱人は、運送品に関し、受け取るべき報酬、運送費その他委託者のためにした立替金・前貸金について、その運送物を留置することができるからです(商法562条)。留置されることにより、事業の流れて停止してしまっては、事業価値の毀損が生じてしまうことがあります。
そのような事態に陥らないように運送業者の利用をするタイミングを見据えて民事再生の申立てを検討したり、運送業者の債務を生じさせない工夫をすることもあります。
仮に運送業者を債権者に含み、運送業者から運送業の遂行を断られる場合には、別除権受戻弁済協定の締結を目指して、共益債権化(随時弁済が可能な債権)を目指す必要があります。具体的には、留置されている物件の処分価値を把握して、早期に監督委員と交渉し、別除権協定の同意を取ることとします。監督委員には運送業者対応は早い段階から協議をしておくことが肝要です。
一部の運送業者は、一度民事再生手続で債務を棄損させてしまうと、割引運賃が受けられないなどのデメリットを受けることがあります。結果的には、全額支払う方が経済的には合理的な場合もあります。このような場合には、民事再生法85条5項5後段を利用して、裁判所の許可を得て、少額弁済することもあります。