民事再生手続の流れは以下のとおりです。
- 民事再生の申立 弁済禁止の保全処分及び監督委員の選任
裁判所及び監督委員の監督のもと、従前通り会社業務を遂行します。 - 債権者様への説明会
- 再生手続開始決定 裁判所が民事再生手続を開始する旨の決定をします。
裁判所から各債権者に対して、開始決定の通知と債権届出用紙等が送付されます。 - 債権届出期 債権者は、債権届出期限までに裁判所に対し債権届出を行います。
- 再生計画案提出 債務者は、再生計画案(再生債権に対する弁済率、支払時期等について定めた弁済計画案)を作成し、裁判所に提出します。
- 債権者集会 再生計画案の可否について、債権者集会での決議を行います。
- 再生計画の認可決定(債権者集会の直後) 裁判所が再生計画の内容が適法か否かチェックし、認可決定を行います。
- 再生計画に従った再生債権の弁済開始
1 申立の機関決定
民事再生を申し立てるにあたっては、事前に取締役会で申立てをすることの決議をすることが必要となります。
なお、民事再生の申立てにあたって事前に株主総会を開く必要はありません。
2 裁判所への申立
民事再生を申し立てる機関決定をしたら、申立てを行うしかるべき日に、裁判所に対して申立書及び疎明資料を提出します。
東京地方裁判所においては、申立てにあたって事前に詳細な打ち合わせを行うことは必要とされていませんが、事前相談メモを裁判所に提出することが必要となります。申立にあたっての裁判所への相談、調整については各地の裁判所毎に運用が異なる場合があるので、事前に裁判所に確認したほうが良いでしょう。
3 監督委員の選任
裁判所へ申立てを行いますと、裁判所より監督委員が選任されます。監督委員は、後見的な立場から再生会社の再生手続の遂行を監督する者で、弁護士の中から選任されます。破産手続における管財人のように、再生会社の財産の管理処分権を有するものではありませんが、財産の処分等を行う場合には、監督委員の同意が必要となりますし、民事再生手続の進捗については逐一監督委員に報告すべきです。
4 保全処分の発令
民事再生の申立てと同時に、保全処分の申立を行うことになります。保全処分とは、その名のとおり再生会社の財産の保全を行うための措置です。保全処分により、再生会社は、債権者に対する弁済や担保提供等を行うことが原則として禁止されることになりますので、買掛金や未払金の支払い、手形金の決済が棚上げされることとなります。
この保全処分に反して一部の債権者に対して行われた弁済は、その効力が無効となるので、弁済してしまった分は、支払先に対し返還を求めなければなりません。再生会社としては、特に懇意な取引先ですとか、特別な恩義のある取引先だけには支払いを行いたいと思うこともあるかもしれませんが、特定の取引先のみに支払うことは公平性を害しますし、上記のとおり結局は保全処分に反するとして取引先に対して返還を求めざるを得ないので、かえって迷惑がかかります。
例外的に支払える場合もあるので、取引先への対応は弁護士と相談のうえ慎重に進めてください。
5 債権者説明会の開催
裁判所へ民事再生の申立を行ったとしても、直ちに再生手続が開始されるわけではありません。東京地方裁判所においては、再生会社が民事再生を申し立てたことについて、再生債権者の反応がどのようなものか、再生債権者の意向を確認し、その意向を踏まえたうえで、正式に民事再生手続を開始することとされています。
民事再生を申し立てると、速やかに債権者に対する説明会を開催し、再生債権者に対して、民事再生に至った経緯、直近の財産状況、今後の見通し等を説明し、再生債権者からの質問や意見をとりまとめ、裁判所に対して報告します。
再生債権者から見れば、取引先が民事再生を申し立てたことにより、本来支払われるはずであった金員が支払われずに棚上げとなるばかりか、その後大幅に債権カットがなされる見込みとなります。そのため、再生債権者の中にはひどく憤慨し、再生会社の代表者や申立をした代理人を激しく非難する場合もあります。債権者の方たちの言い分にはもっともなところもありますので、再生会社側としては冷静に対応する必要がありますし、また、説明会においては、代表者が誠実に陳謝するべきでしょう。
また、取引債権者のなかには、説明会で具体的な話を聞くまで、会社との取引を継続するか否かの判断を保留するという方も少なからず存在します。そのため、説明会の開催は申立後なるべく早期に開催すべきです。
6 開始決定
上記の債権者説明会の状況を踏まえて、裁判所は正式に民事再生を開始する旨の決定(開始決定)をします。
7 財産評定
民事再生が開始されると、再生会社は財産評定を行うこととなります。財産評定とは、開始決定日現在の再生会社の財産を、その時点で処分して換価した場合の価格で評価し、もし仮に再生会社が開始決定日において会社の事業を停止し清算した場合の配当率がどの程度になるかを算定するものです(法124条1項)。
民事再生の再生計画においては、再生債権者に対する弁済率が清算配当率を上回ることが要求されます(清算価値保障原則)ので、財産評定はその後の再生計画における弁済率の下限を画する機能を有することとなります。
清算配当率があまりに高いようだと、再生債権者から「だったら今すぐに破産して配当してくれ」という意見が出る可能性が高くなりますので、申立ての前段階で、清算配当率の見込みに加え再生に値するだけの返済が可能かどうかについてまで予め試算しておくことが重要です。
8 債権の届出
開始決定がなされると、正確な再生債権額を把握するため、予め定められた届出期間内に各再生債権者から債権額を届け出てもらうこととなります(法94条1項)。なお担保権(別除権)付債権については、再生債権者の考える担保物件の評価額と予定別除権不足額の届け出も必要です(法94条2項)。
債権届出の際には、再生債権の裏付けとなる証拠書類(手形の写し、請求書等)もあわせて提出してもらうと、その後の債権認否における照合が容易になりますので、届出書とあわせて証拠書類を提出してもらうよう再生債権者に要請するとよいでしょう。
9 債権の認否
再生債務者では、債権者から届出のあった再生債権について証拠書類や手持の帳簿等と照合して再生債権の額及び議決権の額を確定します(債権認否)。
再生債権者の届出額と再生会社の把握している債権額が異なることはあまりないように思えますが、再生債権者において相殺を前提に届け出たり、再生会社は税抜額で債権額を把握しているのに届出債権額が税込であったり、その他様々な理由で、届出債権額と再生会社の認識債権額が異なることがままあります。必要に応じて債権者に問い合わせて金額のすり合わせを行う必要があります。
10 再生計画の作成・提出
民事再生申立後の状況、財産評定や債権認否の結果を踏まえ、再生会社の再生計画を策定します。
自主再建型(民事再生を申し立てた会社が引き続き事業を継続して事業再生を目指す類型)の場合には、再生会社の将来の事業収益計画(事業計画)を作成したうえで、当該収益を主たる弁済原資として数年間で分割弁済する計画(弁済計画)を立てることとなります。事業計画は、合理的で実現可能性のあることが重要です。そのためには、足元の業績推移と今後の見通しだけでなく、経営改善のための各施策を具体的に検討したうえで当該経営改善効果を数値に落とし込んでいくことが必要となります。
また、再生計画では、計画で返済しきれなかった再生債権について債務免除を求めることになります。再生債権の免除がなされると債務免除益課税も生じうるので、タックスプランについても丁寧に検討する必要があります。
再生計画は、債権者集会において債権者の賛成多数(議決権総額の2分の1以上、出席債権者の過半数以上)を得ないと可決、認可されませんので、再生会社としては、計画を提出すると同時に、最低限主要債権者に対してはその内容を説明し理解を得る努力をすべきです。
11 債権者集会
債権者集会において議決権額の半額以上、出席債権者数の過半数以上の賛成を得られれば、再生計画は可決、認可されることとなります。再生債権者は当日債権者集会に参加せずに、事前に書面投票を行うこともできますので、再生会社としては、事前に再生債権者に書面投票をするように促し、当日までに認可される見込みを付けておくことが重要です。もし万が一、債権者集会当日に計画案が否決された場合、改めて期日を設け、一度だけ再決議をすることができます。
12 再生計画の履行
再生計画が認可され、確定すると、後は再生計画を履行していくこととなります。再生計画に基づく弁済等、再生計画の履行状況は、一定期間毎に裁判所及び監督委員を報告することとなります。
場合によっては、再生計画の履行期間中に、経済事情の変動等の理由に再生計画の履行が困難な事態に陥ることもあります。その場合、改めて再生債権者による決議を経て計画の変更をすることも可能です。