事業譲渡と会社分割の違い

第二会社方式において事業譲渡と会社分割のどちらを活用すべきか。

私的整理においては、第二会社方式を活用して、事業再生を図るケースが多いですが、事業譲渡と会社分割のどちらを活用すべきでしょうか。ケースバイケースというほかありませんが、主に以下の点を考慮して、最終スキームを活用することになります。

1 総論としての違い

事業譲渡は個別資産や契約等の売買の集合体と言えます。これに対し、会社分割は合併や相続と同じく、包括承継とされております。
そのため、事業譲渡の場合には権利義務の承継に当たり相手方の承諾を得ることが必要ですが(黙示の同意も可)、会社分割の場合には個別の同意手続きは不要です(ただし賃貸借契約等において、会社分割が契約解除事由となっていることは少なくありません)。

2 債権者保護手続や労働者保護手続

会社分割の場合には債権者保護手続きが必要となり、原則として、個別催告も必要となります。これに対し、事業譲渡の場合には、特段の手続は必要ありません。会社分割の場合には、労働者保護手続きも必要ですが、事業譲渡の場合には不要です。

3 消費税の扱い

(1)課税取引か否か

事業譲渡の場合は、課税取引(消費税法2条1項8号)となりますが、会社分割の場合には、不課税取引(消費税法2条1項8号、消費税法施行令2条1項4号)となりますので、譲渡対象資産や譲渡対価が幾らであろうと消費税の心配が必要ありません。

(2)新会社が納税義務を負うか否か

新会社での納税義務については、会社分割の場合、原則、課税事業者となります。分割承継法人(新会社)のみならず、分割法人(旧会社)の課税売上高も1千万円を下回らない限り、申告義務は免除されません(消費税法12条1項、2項、5項、6項)。他方で、事業譲渡の場合、課税事業者の届出、又は、資本金が1000万円以上でなければ、原則、免税事業者となります。しかし、免税事業者とならない例外規定が多数ありますので、十分な注意が必要となり、税理士の確認が必要になります。

4 不動産取得税等

不動産取得税は事業譲渡の場合には必要となりますが、会社分割の場合、一定の要件を満たせば非課税とすることも可能となります。

5 許認可の承継

その他、許認可の承継等で違いがありますので、主務官庁や場合によっては行政書士にも確認しながら、十分な検討をすることが必要となります。