経営者保証に関するガイドラインを活用して、自宅を残す方法

経営者保証に関するガイドラインを活用する場合、破産に比べて、自宅を残しやすいという説明を行いました(経営者保証に関するガイドラインと破産との比較)。
破産の場合には、財産の管理処分権が破産管財人に移りますので、破産管財人が自宅を処分、換価してしまいますので、親族が管財人から自宅を買い戻すことが出来なければ、自宅を残すことは困難です。 他方で、経営者保証に関するガイドラインを活用する場面は、金融機関債権者の理解が得られることが条件になりますが、以下の方法により、自宅を残す余地があります。様々な場面がありますので、場面ごとに説明します。

1 住宅ローンがオーバーローン状態の場合

経営者保証に関するガイドラインが適用される案件では、保証人個人の資産の価値は、早期処分価格等で試算するとされています(経営者保証に関するガイドラインQA7-25参照)。住宅ローンの残債務額が住宅の価値(早期処分価格等)を上回っている場合には、対象債権者である金融機関にとって、住宅自体の価値はないと考えることになります。そこで、(華美でない自宅かどうかの議論をするまでもなく)住宅ローンの支払さえ継続出来れば、自宅を残すことは可能です。
住宅ローン債権者は、原則として、経営者保証に関するガイドラインの対象債権者になりませんので、今後の収入等で住宅ローンを支払い続けることは何ら問題になりません。
なお、住宅ローンの債務額があまりに過大であり、住宅ローンの支払を継続すれば、経営者保証に関するガイドラインに基づく弁済計画を策定することが出来ない場合、例外的な扱いにはなりますが、「弁済計画の履行に重大な影響を及ぼす恐れのある」と評価できるケースの場合、住宅ローン債権者も対象債権者に取り込んで、債務免除の交渉を行うことも考えられます。
オーバーローンの場合

2 住宅ローンの方が住宅の価値よりも小さい場合や無担保の場合

では、逆に住宅ローンの方が住宅の価値よりも小さい場合(余剰がある場合)や無担保の場合はどうでしょうか。
この場合には、剰余の範囲(無担保の場合には、住宅の価値相当額が剰余額になります。)が「回収見込額の増加額の範囲内」かどうかで対応が変わってきます。範囲内であれば、「華美でない自宅」であれば、「インセンティブ資産」として自宅を残すことが可能です。
他方で、「回収見込額の増加額の範囲内」と言えないケースの場合には(例えば、主債務者が破産で異時廃止、つまり、配当ゼロの場合など)、原則として、「インセンティブ」資産として残すことは出来ません。この場合には、自宅は「非残存資産」になりますので、換価・弁済することが原則になります。もっとも、この場合でも、余剰部分の処分価値相当額を分割弁済し(経営者保証に関するガイドライン7項(3)④)、対象債権者との協議により、自宅を残す処理が考えられます。経営者保証に関するガイドラインにより、柔軟な解決が図ることが出来る一例と言えます。
剰余ありの場合 (無担保の場合)

3 主債務の担保が設定されている場合

主債務の担保が設定されている場合、これがオーバーローンの場合には、自宅の価値(早期処分価格当)相当額については、支払をしなければなりません。保証人や第三者が自宅の価値相当額を一括ないし分割で支払う交渉を行うことになります(債務者や担保権設定者の変更が必要になるでしょう。)。他方で、住宅の価値を上回る分については、担保解除及び当該債務相当額の免除を要請することになります。
主債務の担保設定の場合

なお、住宅の価値の方が住宅ローン債務よりも高い場合(余剰がある場合)ですが、余剰部分については、2項記載のとおり、(回収見込額の増加額の範囲内であれば)インセンティブ資産として残すか、余剰部分の価値相当額を分割で支払う合意をすることが考えられます。