経営者保証に関するガイドラインと個人破産との比較

経営者保証に関するガイドラインを使う場合と個人破産のどちらが有利なのでしょうか。破産に比べたメリットや留意点について、説明します。

1 個人破産と比べたメリット

経営者保証に関するガイドラインは、個人破産に比べて以下のメリットがあります。

第1に、信用情報機関に登録されません。経営者保証人が再起を図りやすいと言えます。

第2に、金融機関の保証債務しか対象としないため、住宅ローンの支払が継続でき、結果として、自宅を比較的守りやすいとも言えます。(住宅ローンがないとか、住宅ローンの債務額が住宅の価値よりも少額の場合にはインセンティブ資産として残すなど、幾つかの手法で自宅を残し得る手法と言えます。)

第3に、破産の場合、自由財産と言って、原則として現金99万円などの自由財産や拡張自由財産(これは多少幅がありますが)以外の財産を残すことは出来ませんが、経営者保証に関するガイドラインの場合、自由財産や拡張自由財産だけではなく、インセンティブ資産を残すことも可能な場合があることが挙げられます(ただし、主債務の整理手続の終結前に「保証債務の整理を開始」すること(経営者保証GL7項(3)③)と早期の事業再生や廃業によって回収見込額が増加することが条件)。

金融機関にとっても、早期の事業再生や廃業に支援することで多くの債権回収が図れ、さらに管理コストが低減し、地域経済の活力向上に寄与できるなど多大なメリットがあります。

2 経営者保証に関するガイドライン活用の際の留意点

経営者保証に関するガイドラインは、個人的借入金など保証債務以外の債権は原則対象外になります。また、強制力がない私的整理ですので、時間を要しますし、明確なスケジュールがあるわけではありません。困難案件の場合、最終的に成立せず、費用と時間を無駄にするリスクもあります。
結局は案件ごとに個人破産と経営者保証に関するガイドラインのどちらが良いのか、はたまたその他の手法が良いのか、検討することになります。
なお、個人破産と経営者保証に関するガイドラインの違いを整理した表は以下のとおりです。

  破産 経営者保証ガイドライン
信用情報 登録される 登録されない
個人的借入金等 取り込まれる(支払不可) 原則取り込まない(例外的に取り込む)
住宅ローン(自宅の処理) 管財人が換価する。(自宅を残すためには親族等協力者への任意売却が必要) ①オーバーローンの場合、支払継続し、居住継続できる場合もある。
②余剰ありの場合も、インセンティブ資産として残すか、公正な価額での弁済により、居住継続できる場合もある。
残せる資産 ①現金99万円、預金20万円(裁判所の運用)
②以上を超える場合には、拡張自由財産として認められるか次第
①現預金99万円は自由財産・拡張自由財産
②経済的合理性がある範囲で、インセンティブ資産として、残しうる。
スピード 迅速 一定の時間を要する。