再生計画の概要

私的整理の再生計画について説明します。

1 再生計画策定の意義

債務超過会社が事業再生を図る上では、債務超過解消という一定のゴールを確認するとともに、十分な事業改善を図ることが求められます。

そのためには、財務DDを実施して、実態債務超過額を確認して、どの程度の期間や努力で実態債務超過を解消できるかを確認することが必要です。また、事業DDを実施して、経営が困難になった原因、事業改善の余地(外部環境分析、内部環境分析を前提として実施します)を行い、事業改善施策(アクションプラン)を策定することが求められます。軽微なリスケジュールの計画、事業規模が非常に小さいとか、事業価値が乏しい企業は別として、実態債務超過会社の事業者の場合には、再生計画策定の前提として、財務DD・事業DDが必要になることがほとんどです。

十分な事業改善を実施しても、過剰債務状態に陥っており、自助努力だけでは抜け出せないことも考えられ、その場合には、財務内容の改善のため、金融取引の正常化のためにも、債権放棄等の金融支援が求められることになります。もっとも、金融支援には、合理性、相当性、平等性(衡平性)が求められますので、その点について記載することが求められます。事案によっては、確実性(遂行可能性)を説明することが求められるケースや大義名分の記載が必要なケースもあるでしょう。債権放棄を伴う計画の場合には、経営者責任、株主責任の明確化を図ることも必要です。

以上のとおり、再生計画には、事業改善を実施する箇所(PL改善)だけで足りるケースと財務内容改善を記載する箇所(BS改善)までの記載が求められるケースの2種類があります。

再生計画案は、金融機関に一定の支援を求めるために作成する意義がありますが、それだけでなく、経営を行う当事者(債務者)にとって、経営上や財務上の目標を確認し、遂行させる規律付けを行う意味があります。

2 再生計画の項目

中小企業再生支援協議会の場合には、再生計画の項目には以下の内容を含むものとするとされています(中小企業再生支援協議会事業実施基本要領参照)。

・企業の概況

・財務状況(資産・負債・純資産・損益)の推移

・実態貸借対照表

・経営が困難になった原因

・事業再構築計画の具体的内容

・今後の事業見通し

・財務状況の今後の見通し

・資金繰り計画

・債務弁済計画

・金融支援(リスケジュール、追加融資、債権放棄等など)を要請する場合はその内容

中小企業再生支援協議会において再生計画を策定する場合には、いわゆる数値基準を満たすことが必要とされますが、スポンサー型の場合など一定の例外もあります。

3 債権放棄を伴う案件では経営者保証ガイドラインに基づく保証人の弁済計画の検討を忘れずに

主たる債務者が準則型私的整理手続を利用する場合、保証債務の整理については、原則として、主たる債務と同一の準則型私的整理手続を利用することとなっていますので(経営者保証ガイドライン7項(2)イ))、主たる債務の再生計画を立案する際には、同時に、保証債務の弁済計画を立案することが一般的です(このように一体的に計画を策定するので「一体型」といいます。)。

なお、保証人にインセンティブ資産を残す希望がある場合、主たる債務の整理手続が終結すると、インセンティブ資産を残す余地がなくなりますので、その意味でも保証債務の弁済計画を同時に立案することが求められます。