事例紹介

事例紹介7 経営者保証に関するガイドライン(特定調停)

主債務者自己破産、保証人の負債総額970万円、全債権者17条決定により整理

1 案件概要

主債務者は、代表者甲により、個人事業として出発した役務提供型の極めて小規模な事業体であった。その後、法人化し、役務提供型の事業を行い、地元の銀行より、約850万円の借入を受けていた(全額について、地元の信用保証協会が保証していた。)。代表取締役社長は、上記借入金の債務全額について連帯保証していた。甲社長は、自身の個人的借入金として、信販会社2社に合計約120万円の債務を負っていた(甲社長の債務額は、合計3社に約970万円)。

(1)主たる債務者の整理

主たる債務者は、事業継続が困難であり、再生も困難であったため、事業譲渡実行後、直ちに破産手続を申し立てた。

(2)保証人の債務整理

ア 財産調査

財産状況を確認したところ、以下のとおりであり、破産時でも全額残すことができる自由財産しか保有していないことが確認された。

  • 現預金は20万円未満
  • 自宅はオーバーローン(ただし、売却予定)
  • 小規模企業共済210万円(差押禁止財産=自由財産)

イ 債権者との協議・交渉状況

一時停止等の通知発送後、遠方でもあったので、以下のとおり、主に電話や書面での交渉を行うこととして、経営者保証ガイドラインの趣旨要件などを説明した。また、代表者には直接訪問してもらい、代表者の現在及び将来の生活状況の説明をしてもらった。信用保証協会担当者は、当初は、下記のとおり、破産でよいのではないかとか、分割弁済してもらいたいなどと言っていたが、下記のとおり、説明したところ、経営者保証ガイドラインの利用は吝かではなく、特定調停の申立自体には異論ないとのことであった。
また、個人的借入金のカード会社は経営者保証ガイドラインの利用には反対ではないものの、特定調停のために出頭することまでは出来かねるとの回答であった。

  保証人の意向 債権者の考え
GL利用 GL利用したい。 破産でよいのでは(注)
今後の収入に基づく分割弁済 弁済原資にならない (GLQA29)。 破産しないなら、毎月支払ってもらいたい。
現預金20万円
小規模企業共済
保有したい。 特段意見なし

ウ 申立て

当事務所弁護士は、地方裁判所本庁に併置された簡易裁判所に申立することとした。自由財産しか財産がないため、弁済額0円とすることも考えられなくはないが、誠意を示すべく、10万円の弁済計画を立案した。申立書及び添付資料は、手引きを参考とし、申立書等は1通で申し立てた。印紙代は、算定不能とし、6500円を納付することとした。

エ 調停でのやり取り

信用保証協会に代理人が就任し、小規模企業共済(差押禁止財産)の弁済を求めてきて、弁済しないことは不誠実ではないかとの主張を展開してきた。当事務所弁護士は、破産手続でも自由財産である差押禁止財産は残すことが出来るものであると主張し、調停は平行線で終わった。

オ 期日間の調査

当事務所弁護士は、自由財産を残存資産として残し、弁済対象にしないことのみをもって「弁済について誠実」ではないと解釈することは困難か否か照会を行ったところ、事務局より困難と考える旨の回答を受ける(現在の経営者保証GLQA3-4参照)。
さらに、調停委員会が調停条項案を提示する場合には、「当該調停条項案は、特定債務者の経済的再生に資するとの観点から公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容のものでなければならない」(特定調停法15条)。「公正」とは公平でかつ、法令に反しないこと、「妥当」とは債務者の経済的再生のために適切な、相応しい内容の藻であることを指すことなどを指摘した書面を作成し、提出することとした。

カ 調停成立

最終的には、全債権者と17条決定により調停が成立した。裁判所の出した案は、弁済額を20万円とするという内容だった。

2 経営者保証ガイドラインに基づく整理が奏功したポイント

  • 社長(保証人)が誠実であったこと、今後の生活状況等の説明、謝罪文を出した。
  • 経営者保証ガイドラインの要件の解釈について、十分な調査を行うとともに、丁寧に説明を行った。
  • 調停委員が中立・公正な第三者の立場で説得してくれた。

3 参考文献

事業再生と債権管理155号「主債務者を事業譲渡後、破産手続により整理し、保証人は、特定調停を申し立て、経営者保証ガイドラインに基づき、保証債務に加え、個人的借入金債務も取り込んで、いわゆる17条決定により同時に整理した事例」