売上高年商4億円程度、負債は7億円程度、不渡り後でもあり、売掛金や在庫に担保設定されていたが、事業再生できた事例
1 案件概要
とある地方の製造工場であった。品質には定評があり、表彰も受けていた。また、従業員も相応に抱えており、地域経済への貢献をしている会社であった。
しかしながら、全国各地に営業所の拠点を出すことで、その固定経費の負担が重くのしかかることとなっていった。また、古参社員が離職し、生産効率の低下により、納期を守ることが出来なくなるとか、操業停止等により、窮境に陥り、地元の再生支援協議会の支援を受けて、経営改善計画を立案するに至っていた。
しかし、その後も、一部受注により赤字となったほか、赤字状態の改善が止まらず、運転資金をメインバンクから借りるほか、ノンバンクから売掛金を譲渡担保に借入を行うとか、公租公課(社会保険料等)を滞納するなどしたが、それ限界に達し、数日後に手形不渡り必至の状態となり、当事務所弁護士に相談が来ることとなった。
事務所弁護士は、一度事務所で打ち合わせし、資金繰りがひっ迫しており、不渡り必至である以上、民事再生以外の再生は出来ないものと判断した。たまたま連休を挟んでいたので、連休の間に、当事務所弁護士が会社を訪問し、社長や幹部とともに事業改善プランを検討し、大幅な固定費削減による事業再生を目指すとともに、資金繰りも細かく確認した。製造業であり、製品の安定供給のためには、スポンサーによる支援を受けることが出来れば合理的と考え、スポンサー選定も目指すプランを練ることとした。
民事再生手続申立後、最初に実施したのは、売掛金に担保設定しているノンバンクとの交渉であった。ノンバンクが売掛先に債権譲渡通知を出せば、それにより当社の売掛金全額は回収されてしまい、当社は資金不足により、倒産してしまうからである。当事務所弁護士は、ノンバンクを訪れ、資金繰り計画を示し、分割弁済により、ノンバンクへの満額支払は実現できることを丁寧に説明し、何とか理解を得て、最初の課題を解決することが出来た。
メインバンクは再生支援協議会で支援を表明し、毎月、運転資金融資をしていたにもかかわらず、突如として、資金を焦げ付かせ、不渡りを起こすと言われたため、怒りの感情を持っていたそうである。メインバンクの担当は、(その時は連休直前であったが)「今から民事再生を申立てしても、間に合うはずがない。そんなに急いで対応できる弁護士はいない。」とのことであったが、連休中に民事再生の申立準備を行い、連休明けすぐに民事再生手続を申し立てた。民事再生手続申立後、当事務所弁護士と社長で訪問するものの、しばらくは面会謝絶状態であった。会社が迷惑をかけたことは誠実に詫びるべきであることから、当事務所弁護士のチェックのもと、社長に謝罪文を作成してもらい、当該金融機関に渡してもらうこととした。当該メインバンクは、幸い、債権者説明会にも出席してくれ、その後、メインバンク担当者と折衝を重ねる中で信頼関係を構築していった。在庫にも担保設定を受けていたが、担保実行されることなく、別除権協定(和解)を締結することが出来た。
リース会社も10社あり、当該地域ではリース債権は共益債権であるなどの主張も受けたが、別除権付き再生債権であり、担保価値相当額しか支払えないなどと交渉を行い、全債権者と別除権協定を締結できた。
続けて、不採算の営業所の廃止に着手した。従業員を解雇し、賃貸借契約も民事再生法49条に基づいて解除していった。さらに、従業員が不安に陥っていたことから、ほぼすべての社員と面談し、会社への不満や問題点を聞き取っていった。
民事再生後も引き続き、資金繰りが厳しい状態が続いていたため、公租公課の滞納解消は容易には実現できなかった。公租公課庁には弁護士も同席し、一定程度待ってもらう様交渉していった。さらに、民事再生後に融資してくれる金融機関に融資(DIPファイナンス)を依頼し、融資を受けることが出来た。民事再生会社に融資が出たという情報は、仕入先・得意先の信用回復効果もあり、大きな意味があった。
その後、複数のスポンサー候補と交渉し、最終的に一部上場企業の子会社への計画外事業譲渡を実施した。事業譲渡後、清算型の再生計画を立案し、ほぼすべての債権者の同意を得て、再生計画は認可された。社長は、スポンサーが設立した新会社でも社長に就任し、現場を指揮しており、新会社は現在も堅調な業績を上げて、スポンサーからの事業譲渡対価等により、再生手続は無事終了した。
2 事業再生が奏功したポイント
- ノンバンクの理解を得られ、譲渡担保の実行通知を受けなかったこと
- メインバンクの理解を得られ、在庫担保の実行を受けなかったほか、再生手続に協力してくれたこと
- リース会社も最終的には協力してくれ、別除権協定を締結出来たこと
- DIPファイナンスを受けることが出来たこと
- 従業員の離散を防ぐことが出来たこと