売上高年商7000万円程度、負債は遅延損害金を含めると1億円以上、家族経営
1 案件概要
ほぼ家族経営で年商7000万円程度の酒蔵(酒造メーカー)であった。酒造りには定評があり、各種品評会でも受賞歴を有していた。
しかしながら、現経営者が代表者に就任する前に生じた金融機関の有利子債務の期限の利益がなくなっており、信用保証協会に代位弁済されている状態となっていた(最大債権者は地元の信用保証協会)。その他の債務もサービサーに売却されている状態であった。資金繰りもひっ迫している状態であり、酒造りの仕入にも事欠く状態であった。
そのため、当事務所弁護士が関与し、バンクミーティングを開催し、抜本処理を伴う再生計画を立案することとなり、まずは金融機関に個別訪問を実施した。その後、バンクミーティングを開催し、全金融機関に元利金の返済を猶予してしてもらう要請を行うこととなった。その後、金融機関とも協議の上、震災支援機構の支援を受けられるべく動くものの、支援銀行が不在のため、特定調停スキームを活用し、事業再生を目指すこととなった。なお、事業規模も小さく、家族経営のため、当初からスポンサー型の事業再生は目指しておらず、自主再建を目指していた。
最大債権者の信用保証協会と何度か協議を重ね、再生計画を立案することとした。再生スキームはいわゆる第二会社方式を採用することとした。酒造免許の承継のため、税務署とも協議を重ね、新会社に酒造免許の承継が得られるよう努めた。なお、サービサーは、バンクミーティングにも出席せず、当社再建には積極的ではなかったものの、再生計画に積極的に反対するものではないとして、消極同意(積極反対の意思表示はしない)という約束をしてくれた。最終的には、当該スポンサーはいわゆる17条決定により解決を図り、その他の金融機関は全行同意となり、調停は無事成立した。
その後、会社分割を実施し、旧会社は特別清算により債権放棄を受け、新会社は現在も酒蔵として生き残っている。認定支援機関による毎年2回のモニタリングを実施している。再生計画策定及びモニタリング支援には、補助金が出されており、専門家費用の一部として、会社の資金繰りの一助となっている。
2 事業再生が奏功したポイント
- 新経営陣の作る酒の品質が高く、社長の妻の営業力・行動力が金融機関や税務署にも評価されたこと
- 信用保証協会が早い段階で事業再生することに協力的な姿勢を示してくれたこと
- 特定調停スキームという公的機関を活用することで金融機関の理解が得やすかったこと
- 設備の状況、製造能力、販売能力、管理力などの事業面の実態を出来る限り説明したこと
- 保証人については、途中で1名が死亡し、全員相続放棄により相続関係が面倒になるところ、相続財産管理人への就任を約束したこと
- モニタリングの実施や保有不動産への担保設定の約束など返済の確実性についても正確に説明したこと
3 参考文献
社長・税理士・弁護士のための私的再建の手引き 第2版』宮原一東・徳永信・安田憲生・岡本成道/著(税務経理協会2016年)に上記事案がより詳しく掲載されています。